記事担当:ユミコ
大阪を訪れる機会があり、なかなか来ることのできない関西なので、障がいのある子とない子が共に育つというインクルーシブ教育の実践を長年されている現場を見学してみたいと、思い切って南桜塚小に電話をしたのが9月。橋本校長先生はどうぞどうぞと快諾してくださいました。本当にありがたいことです。学校に到着すると運動会の練習をしている子供達の元気な声が響き渡っていました。
私は、心の中ではインクルーシブ教育を理想と思いながら、ダウン症の息子の入学を歓迎してくれる学校にと支援学校という選択をしました。その選択が間違っていたとは思いませんが、そんな葛藤もあり、40年のインクルーシブ教育の歴史がある豊中市の実践にとても興味があったのです。この目で見てみたいと思っていました。
結論から先に言うと「拍子抜けするくらい、障がいのある子とない子が当たり前に一緒にいる。分けてることがおかしいと感じるくらい。理想の社会の縮図を見ているよう」でした。
南桜塚小学校には、支援級在籍の”生徒”はいても、支援級という”教室”は存在しません。通常の教室の中に”支援級在籍”の生徒がみんなと一緒に授業を受けています。教室では担任の先生が授業をし、支援級の先生がクラスをサポートしています。支援級の先生は、支援級在籍の生徒にかかりきりになるわけではなく、クラス全体を見ていて、ちょっと困った時のサポートをしています。生徒からは「お助け先生」などと呼ばれるそう。先生たちはインカムをつけていて「ちょっと手が足りないからこのクラスに入ってくれる?」などとその場面に応じて臨機応変に対応しています。「生徒ひとりひとりが南桜塚小の子ども」という意識が先生みんなの中にあり、担任だけの負担にはならず、困りごとは先生みんなでアイディアを出し合います。教員同士の風通しも良いんだろうなと想像しました。
バギー型車椅子の子、全盲の子、ダウン症のある子、クラスにいるのがちょっとしんどくなってしまった子、様々な子がこの小学校では共に学んでいます。運動会の練習のあとには、バギー型車椅子の子にクラスメイトがなにかをにこにこと話しかけています。「この子たちは、つばきちゃん(車椅子の子)の考えていることがわかるんです」と校長先生。先生が子供達から教わることもたくさんあると言います。
私の息子が受けた就学相談では「この子にはどの学級、学校が適しているか」を判定するものでしたが、こちらでは「この子がどうやったらこの小学校で学べるか」を学校が事前に準備するためのものだと伺って「共に学び、共に育つという豊中の歴史はなんとしても守る」と仰っていた校長先生の言葉に胸が熱くなりました。
「学校の決まり事をゆるくしないといけない」「学校が子供達にとって楽しく通える場所でなければいけない」橋本校長はこう言います。例えば、あるクラスでは、勉強が出来すぎてしまい、授業がつまらなくて教室にいられないギフテッドの生徒がいました。クラスの子供達に「○○さんは勉強が簡単すぎてクラスにいるのがしんどいと。どうしたらいいと思う?」と投げかけると「別課題をすることで教室におれるんやったら、やったらいいやん?」こんな提案があがり、まわりの子供達も賛成してくれた。クラスのみんなで決めたからこそ「○○さんだけズルい!」とはならないと。私たちはもっと子供の声に耳を傾けなくちゃいけないと反省したエピソードでした。
共に学び、共に育ち合う実践をしているこの小学校でも、もちろん問題や様々な苦労はあるそう。私たち親は自分の子供にはなるべくトラブルを避け、学校に通って欲しいと願うものですが、同時に子供が失敗する経験を奪ってもいけないとも思うのです。意見の違う友達との折り合いの付け方、友達の気持ちを傷つけてしまった時はどうしたらいいか。学校はそういうこともひっくるめて多様な人間と人間の関わりを学ぶ場なはずだと思いました。
私の経験談になりますが、かつて知人が何の悪気もなく言った一言がずっと心に引っかかっていました。「電車の中で独り言を言っている障がい者がいるけど、怖いから外出させないで欲しいよね」当時は苦笑いで返したものの、将来自分の息子にも当てはまるのではないかと、自分自身に投げかけられた言葉のように感じていました。もし、小さい頃から障がいのある子と育ち合えていたら、彼は誰かを攻撃するわけではなく、ただの独り言だと理解できたのではないかと。
今、学校では「普通」と言われる枠がどんどん狭まっているようじ感じます。子供の不登校の数が過去最高を記録したとのこと。
南桜塚小学校での実践は、障がいのある子にとってだけではなく、多くの人にとって、生きやすくなる社会の礎になるものではないかと思いました。
※南桜塚小の特集がバリバラで放送されます。
10/20(金)午後10:30 〜 午後11:00 Eテレ「バリバラ」シリーズ インクルーシブ教育 (1)「ともに学ぶ」ために大切なこと
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